「猟師ってどうやって収入を得ているの?」
「猟師だけで食っていけるの?」
狩猟・猟師に興味がある人、これから免許を取ろうとしている人は気になりますよね。
この記事では猟師一年生の僕が、猟師の収入源・どれくらい稼げるのかについて話します。
目次
筆者のプロフィール(2022/07時点)
保有免許:わな猟免許
狩猟経験:9ヶ月
捕獲鳥獣:猪・鹿・タヌキ・キツネ・イタチ
猟師とは
猟師といえば、
「銃を持って山に入り、熊・鹿・猪を追いかけてる。
とった獲物や野草で自給自足の生活をしている。」
そんなイメージでしょうか。
会社員時代の僕はそんな漫画のような生活をイメージしてました笑
まずは猟師がどんなお仕事なのか、簡単に解説します。
猟師ってどんなお仕事?わな猟の場合
そもそも猟師と一口に言っても、実はいろんな狩猟スタイルがあります。
パッと思いつくのは銃での狩猟だと思いますが、
僕がやっている“わな猟”もやられている方が多いです。
わな猟の場合、仕事の流れはこんな感じ
・山に入って獲物の痕跡(足跡、フン、食べ残しなど)を探す
・獲物が通りそうな道にわなを仕掛ける
・朝イチで見回りに行く
・獲物がかかっていたら解体所に連絡する
・獲物を保定or止め差しをする
・解体所に運んで獲物を買ってもらう
・山に戻ってわなをかけ直すor別のポイントを探す
朝は日が昇る頃に起きますが、仕事は遅くともお昼には終わります。
獲物がかかっていなければ、8時くらいに帰ってくることも。
猟師って需要ある?
「猟師って今の時代に需要あるの?」
って思われる方もいると思いますが、めちゃくちゃ需要あります!
理由は大きく以下の2つ
・鳥獣による農作物被害
・猟師の減少&高齢化
こちらは農林水産省より出ている、鳥獣による農作物被害額の推移です。
出典:農林水産省HP(https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/hogai_zyoukyou/index.html)
鳥獣による農作物の被害は徐々に減ってきているものの、令和2年で161億円もの金額です。
僕の周りの農家さんで獣害に困っている人が居ないくらい、みんなの悩みの種になっています。
一方で環境省から出ている、年齢別の猟師の数を見てみます。
出典:環境省HP(https://www.env.go.jp/nature/choju/)
40年前と比べると猟師の数は半減、免許所持者の半分以上は60歳以上(オレンジ)なんです。
獣害は抑えたいけど、捕獲する猟師が足りていない・足りなくなってきます。
これに対しなんとか獣害を抑えようと、狩猟とは別に「有害鳥獣捕獲」という制度があります。
対象の鳥獣(鹿や猪など)を捕獲すると、自治体から報酬金が出るという制度。
後ほど解説しますが、これがなかなか美味しい金額なんです笑
競合が少ない。しかもお金をもらいながら活動できる猟師。
始めるなら今です!!
猟師の収入源
では本題の、猟師の収入源について。
金額については住んでいる地域や環境によってバラツキありますので、参考程度に。
猟師の収入源は主に以下の3つがあります。
- 有害鳥獣捕獲による報酬金
- 解体所にお肉を買ってもらう
- 角や皮を買ってもらう
それでは一つずつ見ていきましょう。
1.有害鳥獣捕獲による報酬金
僕がターゲットにしている猪と鹿の場合、有害鳥獣捕獲でもらえるお金はこれくらい
有害捕獲による報酬金
猪:18,000円/頭
鹿:13,000円/頭
※幼獣の場合はもう少し下がります
先で述べた通り、多くの農家さんは獣害に悩まされています。
農家さんからの依頼を自治体・猟友会を経由して受け、活動することで報酬を得ます。
この報酬が猟師としての収入の軸になってきます。
有害鳥獣捕獲による報酬金を得るまでの流れはこんな感じ
・猟友会に入り、有害鳥獣捕獲隊に入れてもらう
・獲物を捕まえたら獲物の写真を撮り、尻尾を切って保存
・月に一回の報告会で写真・尻尾を提出して報酬金を受け取る
※手続きは地域によって異なるようなので、自分の地域の猟友会に確認しましょう
また通常の狩猟の場合は”猟期”と呼ばれる、狩猟ができる期間が決まっています。
多くの地域の猟期は11/15~2/15の3ヶ月ですが、
有害鳥獣捕獲として狩猟を行う場合には猟期外でも狩猟を行うことができます。
通年活動できるところは、猟師としてはありがたいところですね。
2.解体所にお肉を買ってもらう
続いては獲物のお肉を解体所に買ってもらって得るお金、猟師っぽい稼ぎ方ですよね笑
もらえるお金はこれくらい
解体所に買ってもらうお肉代
鹿・猪:2,000~20,000円/頭
解体所にお肉を買ってもらうまでの流れはこんな感じ
・獲物がかかったら解体所に持ち込み可否を確認
・持ち込みOKであれば、保定or止め差しをして車に積んで運ぶ
・解体所の受け入れ口に降ろす
・必要事項(名前、住所、電話番号、免許番号、お肉代振込口座など)記入 ※初回のみ
・後日、お肉代が振り込まれる
金額は獲物から取れるお肉の量によって変動します。
当然、大物であれば取れるお肉も多いので、高く買ってもらえます。
(運ぶのがしんどいので程よいサイズが嬉しいですが、、)
単価については解体所によってかなりバラツキがあるようです。
狩猟を始める際には近くの解体所を見つけて、持ち込み条件や単価を確認しておきましょう。
3.角や皮を買ってもらう
最後に、角や皮を買ってもらって得られるお金はこれくらい
角:1,000-5,000円/本
皮:3,000-20,000円/枚
※メルカリでざっと見た感じの金額
角はオスの鹿が獲れれば、ノコギリで切り落とすことができます。
また鹿の角は毎年生え変わるので、運が良ければ山で拾うこともあります。
そのままの状態で道の駅・ネットで売ることもできますが、
“ランタンハンガー”など一手間加えると売れやすそう。
一方、皮は”なめし”という皮を「革」にする作業が必要で、これが結構大変。
僕も毛皮が欲しくて鹿の皮でチャレンジしました。
獲物から皮を剥ぎ取り、洗って、余分な脂肪・肉を削ぎ、ミョウバン液に漬け込み、脱水し、、
3週間ほどかけて、カッチカチの毛皮が出来ました笑
皮を商品として売ろうと思うと、もう少しスキルがいるなと感じました。
(達成感や感動は半端ないので、猟師を始めたら是非チャレンジしてみてください!)
猟師として食っていけるか
ここまで猟師の収入源について説明してきましたが、こんな声が聞こえる気がします。
「猟師って副業として稼げるの?」
さらに言えば
「ぶっちゃけ猟師だけの稼ぎで食っていけるの?」と。
その疑問に対して、これまでの情報を元に食っていけるかシミュレーションをしてみます。
まずは支出・収入の前提条件を整理していきます。
以下は僕がやっている“わな猟師”としての前提条件です。
猟師の支出の前提条件
狩猟活動費:10,000円/月
生活費:200,000円/月
支出計:210,000円/月
まず狩猟活動費とは猟師として仕事をするためにかかるお金です。
ざっくり1万円としましたが、内訳はこんな感じ
・見回りにかかるガソリン代(ほとんどこれ)
・わなメンテ代
・その他消耗品(獲物を誘き寄せる餌代、有害報告用のスプレーなど) など
そして「食っていけるか=生活できるか」であると思いますので、
生活費も支出の前提条件に含めます。
ここでは生活費をざっくり20万/月とします。
そもそも猟師を始めるのにどれくらいお金かかるの?
という疑問もあるかもしれませんが、
わな猟でいえば免許取得から狩猟を始めるまで、ざっと15万円くらいです。
また別記事で詳しく解説したいと思います。
猟師の収入の前提条件
猟師としての収入:30,000円/頭
先ほど紹介した猟師の収入源のうち、
「3.角や皮を買ってもらう」は以下の理由で前提から外します。
・「2.解体所でお肉を買ってもらう」と併用できない(獲物をそのまま卸すので)
・角は鹿のオスからしか取れず、計算できない
・皮を売るのにスキルが必要
この前提でターゲットとなる獲物は鹿と猪です。
鹿と猪であれば残り二つの収入源(1.有害捕獲の報酬 & 2.解体所お肉代)が有効です。
ここでは1頭あたり3万円の収入があることとします。
食っていけるかシミュレーション結果
収支の前提条件をまとめると
支出:210,000円/月
収入:30,000円/頭
すなわち、ひと月に7頭の鹿か猪を捕獲することができれば、
7頭 x 30,000円 =210,000円の収入を得られ、食っていけると言えます。
ひと月で7頭なら、週に2頭ほど。
こう整理してみると、猟師で食っていくのって割とイケる気がしますよね。
副業としての猟師であれば、わな猟師を始めるまでの初期投資が15万ほどですので、
5頭 x 30,000円 = 150,000円の収入、すなわち5頭捕獲できればペイできます。
初猟期は「初期投資を回収できる5頭」を目標にするのも、いいかもしれません。
猟師として稼ぐためのポイント
シミュレーションによって、「猟師って案外稼げるかも」と思ってもらえたでしょうか。
最後に実際に稼ぐためのポイントについて解説します。
シミュレーションのように、さらにはシミュレーションを超える稼ぎを得るための
アイデアや注意点になります。
僕が猟師を始めるときに、「こうしておけばよかった、、」という目線で書いていきます笑
役場に地域の狩猟実績を確認
これから猟師になろうという方は、「狩猟を始めるならこのエリアかな?」って
なんとなくの目星がついていることかと思います。
では、その地域で狩猟を始めたらどれくらい獲物が獲れそうでしょうか。
そういった情報は役場に問い合わせると、地域ごとの狩猟実績を教えてくれます。
令和1年はOO市:200頭、△△市:150頭
といった具合に。
これと合わせて、地域毎の狩猟登録者数も確認できると
猟師一人当たりの狩猟頭数が分かります。
平均値ですので、これだけではあまり参考にならないかもしれませんが、
狩猟を始める地域周辺のポテンシャルをざっくり知るにはいいと思います。
この問合せ窓口は狩猟免許を受け取る窓口と同じです。
狩猟免許を受け取る際に直接確認してみてもいいでしょう。
猟友会に有害鳥獣捕獲隊加入条件を確認
猟師の収入の軸である有害鳥獣捕獲の報酬金を得るには、
猟友会の有害鳥獣捕獲隊への加入が必要です。
しかし、捕獲隊への加入条件は猟友会毎に異なるようです。
ある地域は狩猟実績が3年必要であったり、ある地域はいきなり入れてもらえたり、、
ですので、自分が入るであろう猟友会に事前に加入条件を確認しておきましょう。
僕は猟友会に入ればすぐに捕獲隊に入れてもらえる、と思い込んでいました。
しかし狩猟実績が1シーズン(猟期一回分)必要と知り、かなりショックを受けました。
勝手に報酬金を当てにしていた僕がよくないのですが笑
解体所に持ち込み条件を確認
お肉は鮮度が命です。
獲物を止め刺し・血抜きをしてからどんどん鮮度が落ちていきます。
そのため解体所は「血抜き後1時間以内の持ち込み」などの持ち込み条件を設けています。
車への積み込み・解体所への運搬を含めて条件をクリアできそうか確認しましょう。
また猟場から解体所への道順もしっかり確認しておきましょう。
僕は初めて解体所に持ち込む際に、道を間違えてかなり焦りました笑
獲物を捕まえた時は自分も興奮状態にあるので、事前の準備は万全にと反省しました。
また解体所によっては猟場への引き取りサービスもあるようです。
大物の場合、一人での運搬はかなり大変なので、こういったサービスは本当に助かります。
楽しく猟師を続けるために、お金も大事
というわけで、今回は以上です。
- 猟師の収入源
- 食っていけるかシミュレーション
- 猟師として稼ぐためのポイント
「猟師って稼げそうだ」ということを示せたと思います。
狩猟を始める準備を進めながら、稼ぐためのポイントを押さえられれば、
自分の財布をあまり痛めずに猟師として活動していけます。
あとは獲物を捕まえるだけ、、
(そこが一番難しいですが、めっちゃ楽しいです!!)
この記事を参考に猟師として稼ぎながら、楽しく狩猟を続けていきましょう。
新たな猟師仲間が増えることを願っています!
以上
コメント